t-miyajimaの自作キーボードのページ

工房で作る新しいキーボードのページ


2025年、私はキーボードを作ります。

私の作りたいキーボード

最初の目標

以下に長文を掲載しています。私のキーボードに興味のある方は何かの待ち時間にでも読んでいただけましたら、大変嬉しいです。

工房で新しいキーボードを作るぞ宣言

2021年10月に会社を辞め人生の目標を失っていた私は、 1年後の2022年10月に狂ったキーボードを自作しました。

それはPonshu70(ポンシュ70)と命名した自作キーボードです。

Ponshu70キーボードの写真

重さが8kg以上、横46センチ、縦28センチ、高さ6センチ。 一般的なキーボードの重量・サイズとかけ離れています。 全ては、私が狂ったキーボードを作ろうとした事から始まりました。

2022年8月、 私は人生の目標も定職もない状態で、 何かに必死に取り組まねばダメだと思っていましたが、 何にも取り組めていない状態でした。 (そういえば、ランニングだけはしていました)

ちょうどその頃、 Ponshu70の前身となる左右分割キーボードを2年ほど使っていた私は、 テーブルの上でキーボードを移動する時にキーボードが左右に分割されていると非常に面倒に思っていました。 特に、書類仕事をするときにキーボードを奥に移動させるのが面倒でした。

どれくらい面倒かというと、左右分割キーボードなので、キーボードが2個あります。 私はキーボードの手前に手首を置くためのパームレストを置いていました。 左右分割キーボードなので、パームレストも左右に分割していました。

キーボードが2個、パームレストが2個、合計4個の移動になります。 本当は角度調整用の本が奥と手前に1つずつなので、合計6個も移動になります。 キーボードを移動させるのが面倒で辛くなるのがわかるかなと思います。 わかりにくかったらごめんなさい。

移動させるのが面倒な状態のキーボード

警察に右折信号無視で捕まった時に職業欄に無職と書かれるほどには仕事もなく、他にやることもなかったので、 よし! この左右分割キーボードを一体型にするぞ! と決意し、どのように作るかもあまり考えていない状態で自作キーボードコミュニティに「作ります!」と勝手に宣言し、後に引けない状態を作り出して制作を開始しました。

まず、でかい木材である碁盤を調達して、左右分割キーボードを木材のケースで繋ごうと思いました。

どれくらいの厚みにするかとか、パームレストとキーボードの角度をどうしようかとか、色々悩みました。 厚みや角度を考えるために立体的な試作を紙粘土で作りました。 でも、実際に木材を加工して手を置いてみないと、わからなさそうだなと思いました。 最終的に、キーボードとパームレストの角度からおおよその寸法を決めて加工を進めました。

Ponshu70の木のケース部分は、碁盤を横にぶった斬って、チェンソーで大まかな形を整え、それから電動ドリル・マルチツール等で成形していき、時にはノミと金槌で細かい形の調整を行い、最後に表面をヤスリがけしてオイルを塗りました。

木材と格闘している最中にふと、
日本一重いキーボードにしたいな、などと狂ったことを思いつき、8kgという気の狂った重さを生み出すために本体に鉄板を埋め込むことにしました。

きりいたドットコムで鉄板を購入し、ねじ止め用の穴をドリルで開けました。 鏡面仕上げにしたら最高に格好いいと思って1日かけて研磨しまくった結果全然鏡面にならず、中途半端なところで妥協してしまいましたが、投げ出さずに最後はピカールで磨いて脱脂して錆止め用のオイルを塗りました。

どう見ても鏡面ではない鉄板

話が脱線してしまいますが、僕が下手くそな研磨を鉄板に一生懸命している最中に近所のおじさん(同級生のお父さん)がやってきて、俺は昔、会社で研磨をやったことがあるという話を聞きました。僕は全然鏡面にならずに途方に暮れながらも必死に青棒やら白棒やらをバフに付けながら、本来なら研磨に向かない電動ドリルに研磨用アタッチメントとバフを取り付けて、体重をかけながら鉄板を磨いていました。 おじさんはクーラーの効いた車内から僕を見下ろしつつ話していたので、なんかすごく悔しい気持ちになったのを覚えています。 おじさんに悪気は全くなかったと思いますし、おじさんは単なる世間話として話してくれただけだと思います。 そういうふうに悔しくなるのは私の心と技術の未熟さのせいです。

さて、自室と駐車場でドリルやノミやらを駆使して、木屑まみれ鉄屑まみれになって、いや、鉄屑はまみれるほど出てなかったと思いますが、とにかく普段加工作業をしないような場所で木と鉄を加工したので、よくもまぁ完成させられたなぁと思うくらい、時間がかかりました。 時間がかかっただけ、完成した時の感動はひとしおでした。

もしかしたら、Ponshu70はキーボードではないのかもしれません。 いや、ぱっと見は一応キーボードのキーが並んでいるのでキーボードですが、そういう意味ではなくて、私にとってすごく大切なアイテムなんじゃないか、そういう感じの意味です。

今でも思い出せますが、碁盤をぶった斬り、加工している間、私はこれまでの人生で、最も全力で取り組んでいました。 失敗してはいけないとか、人に迷惑をかけてはいけないとかじゃなく、これを作らずして人生を前に進ませることはできないんだ、と思っていました。

Ponshu70を完成させた後、私は次のステージに進もうとしました。 お世話になっている人の倉庫の2階を使わせてもらい、 キーボードのための工房を自作したいと思ったのです。

あれ、次のステージは「キーボード制作者になる」とかじゃないんだ? と思った人は、考え方が正しいと思います。 私は意志の弱い人間なので、私がキーボード制作に本気になれるのか、 不安でした。

例えば、キーボード制作のための作業場を借りて、 そこで道具を揃えて作り始めても、 長続きしなかったら悲しくなってしまいます。

甘ったれてんじゃねぇ、って思いますよね。 でも、その時の私は会社を辞めて1年も経ったへちょむくれ人間でしたので、 まずはその甘ったれた根性を叩き直すことから始めないとでした。

かつての倉庫の2階の写真

お世話になっている人の倉庫の2階は、埃にまみれていました。 汚い話で恐縮なのですが、具体的にはタヌキだかアライグマだかの 溜め糞があったり、ヤモリが至る所に潜んでいたりと、 生命感あふれる場所でした。 水道もないので水を汲んできて、雑巾で拭き掃除するところから始めました。

工房の完成まで2年かかりました。 冬の寒さに挫けそうになり、 しばらく倉庫に足を運ばなかった時期もありました。 夏の暑さには耐えられたので、 人間って冬が最も生きにくいんだなと感じたりもしました。

完成した工房室内の写真

自分でも信じられないことですが、キーボードのために自作工房を作り上げられたことは、あまりちゃんとしていない私の人生の中で最も大きな自信になりました。 それと同時に、不用物を廃棄するというのはとても大変なことだ、と思い知らされた2年間でもありました。

そんな私が作りたいと思うのは、
ずっと使い続けられて、ずっと使い続けたいと思ってもらえるキーボードです。
そして、後世に生きる人たちが分別して廃棄しやすい素材・構造のキーボードです。
ちなみに、重さにこだわりはありません。というか、8kgの重さは狂っています笑
ご要望がない限り、あまりに重いキーボードを作ろうとは思いません。

理想を言えば、全て木材と鉄と銅で作りたいですが、 そもそもPCに接続するためにマイコンが必要なので、 厳密に全て木材と鉄と銅で作るのは無理です。 なので、なるべく木材と鉄と銅で作りたい、とします。

プラスチックは再利用可能ですが、 個人が処理するにはハードルが高いです。 なので、できればプラスチックも使いたくないのですが、 キーキャップとキースイッチを木材で作るのはハードルが高いので、 その辺は最初は妥協します。 ただ、ふとしたきっかけや技術的ブレイクスルーによって キーキャップとキースイッチが自作できるようになるかもしれないので、 諦めずに考え続ける所存です。

最初の目標は、

です。

私は、自作工房で上記目標を満たすキーボードをこれから作ります。 というか、作らなければならないのです。 もし作らなかったら、2年かけて作った工房が台無しです。 そんな努力の賜物を自ら台無しにして捨てるなんて、私は嫌です。

2025年3月21日 t-miyajima


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